環境中ゲノム解析に基づく新型コロナウイルス(2019-nCoV)を含む病原体検出系の構築を開始

著者:Yoichi

環境中ゲノム解析に基づく新型コロナウイルス(2019-nCoV)を含む病原体検出系の構築を開始

株式会社ゲノムクリニック(本社:千葉県千葉市、代表取締役共同経営責任者:曽根原弘樹、麻生要一)は、同社が保有する微量DNA・RNA解析技術と次世代シーケンス(NGS)技術を新型コロナウイルス(2019-nCoV)対策に転用し、環境中ゲノムの解析に基づく新型コロナウイルス(2019-nCoV)を含む病原体の検出系の構築を目標とする研究を開始しました。本研究では、空間中粒子や人々が日常生活で触れるドアノブ・手すり等の接触面における環境中ゲノムから新型コロナウイルス(2019-nCoV)を含む病原体を高い感度・特異度で検出する系を確立し、検出時には早期のアラートを発することによって感染を未然に防ぐシステムの構築を目指します。

​▼本研究開始の背景

 2019年12月に中国で感染の拡大が明らかとなった新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症により、中国内では2900名以上が死亡している(2020年3月2日現在)。また本邦を含むアジア圏内、また欧州や北米、南半球にも感染が拡大しており世界的な公衆衛生学的脅威となっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しては現時点で有効な治療法やワクチンが存在しないため、治療は基本的には対症療法であり、感染拡大防止にはPCR法に基づく陽性者の同定と隔離が重要である。

 一方、2019-nCoVは感染による発熱・咳嗽等の発症前から感染力を有するとの報告もあり、感染を疑う症例の一次スクリーニングが困難である。そのため、感染前にリスクを減少させる社会的仕組みの構築が急務である(1)。2019-nCoVの感染経路は従来の飛沫感染経路と同様と予想され、喀痰や体液を介した飛沫感染、また環境中の飛沫や付着物を介した接触感染が主たる経路と考えられる。本研究では環境中の2019-nCoVを高感度で検出する検査系を確立し、検出時に早期のアラートを発することにより2019-nCoV感染を未然に防ぐシステムの構築を目指す。

1. Goyal SM., et.al., Detection of viruses in used ventilation filters from two large public buildings. , Am J Infect Control. 2011 Sep;39(7):e30-8

▼本研究の目的

環境中ゲノム解析により2019-nCoVを含む病原体を検出する検査系の構築を目的とする。また同様の手法により他の病原体(インフルエンザウイルスなど)や病原性粒子(花粉など)も検出できるかを検討する。

▼研究手法

1.ポジティブコントロールRNA、弱毒化ウイルス株を用いた環境中ゲノム検出系の評価

 既に配列が既知のRNA検体を用い、実際に環境中から病原体由来RNAを検出できるかを検討する。感染性を持たない2019-nCoV 部分配列RNAをポジティブコントロールとしてを用いる。また同様に弱毒化インフルエンザウイルスも使用する。異なる素材(ガラス、木材、プラスチック等)の表面に濃度の異なる検体を滴下し、乾燥後に綿棒で擦過する。RT-Realtime PCR系を用い2019-nCoV(または他病原体)特異的ピークが得られるかを明らかにする。また検出限界となるRNA濃度を推定し、実際に有用性のある検出感度となり得るかを検討する。

2. フィールド中での病原体検出

 本検出系を用いて数〜数十粒子の病原体検出が可能と判断された場合、実際にフィールドでの病原体RNA検出を目指す。特にハイリスクと考えられる医療機関等の環境を候補と考える。ドアノブや水まわり、手すりやスイッチ周辺を擦過し、同様の系で解析をする。また空気中の病原体にも注目し、ヘパフィルターを備えた集塵機を用いて、空間中病原体の評価も行う。その際に皮膚の常在菌由来核酸、花粉等の空間中粒子の検出も同時に試みる。

3.ヒトの健康への影響を予測しうる環境中核酸(DNA,RNA)のNGSによる網羅的解析

 上記1,2と併行しターゲットを事前に絞り込まない病原体解析を検討する。将来的な新規病原体や、既知の病原体の大規模なゲノム構造変異(2019-nCoV含む)を想定し次世代シーケンサーを用いた環境中核酸の網羅的な解析系を構築する。ここでいう次世代シーケンス解析はNanoporeシーケンスのような長鎖シーケンスと精度の良い短鎖シーケンスの効率よい組み合わせを模索する。実際に季節性インフルエンザにおいては、例年の小さな変異と数年ごとの大規模なゲノム構造変異の組み合わせで21世紀の現在に至るも流行を繰り返していることが知られており、本解析の有効性が示唆される。

▼研究費について

 ゲノムクリニックの自主財源の活用を主としつつ、共同研究機関として企業や研究所・医療機関等からの研究費を募る。また、研究費の協力・支援をしてくれた方の施設の環境中ゲノム分析を行うプランとセットにした、クラウドファンディングによる研究費の調達も開始を予定する。

▼研究体制

・主たる研究者

曽根原 弘樹 医師・博士/株式会社ゲノムクリニック 代表取締役 Co-CEO(医療・テクノロジー管掌)

・共同研究者

国内の大学と共同研究を実施し、従来の遺伝子診療・検査の研究者、新たに参加する感染症分野の研究者と共に研究を推進する予定

・アドバイザー(感染症領域)

山岸 一貴 (医師/感染症領域)

著者について

Yoichi administrator